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私の「コンパス」

 

去年は失敗から学ぶ一年だった。

 

成果をつい求めてしまいがちな私にとってはそれは結構辛かったけど、

失敗から学んでいたらもうそれは失敗じゃない、と思えるようになったのは、

たくさん失敗をしたことで身につけた一つの知恵だと思う。

 

それはちょっと谷から這い上がって見下ろしたからこそ言えるのだけれど、

それでも一度落ちたからこそ見えるものもあって、

今はその諸々が「経験してよかったな」と思えるくらいに回復してきた。

 

といっても、これも一つの状態で、また月の満ち欠けのように気持ちも変化していく。

上がっては下がり、下がっては上がる。

 

その繰り返しが人生だ。

 

だから、良い状態をキープしなければ!と躍起になるのも今年はやめようと思う。

 

落ちるときは、落ちる。

 

ただ、どん底まで行かないように気をつけていけば良い。

落ちていても、人生は楽しめることも今回分かった。

 

回復するのには、冬眠するように頭を低く、静かにして自分を労るのが一番だ。

風向きは必ず変わるから。

 

あと、情報に触れすぎない。

最近は頼んでもいないのに情報の方がノックもなしに飛び込んでくる。

心まで揺さぶられることも少なくない。

 

 

自分の声を聞き取って、自分の心にスペースを作る。

それに徹する。

 

そうすると、ふっと空から羽が降ってくるように、

また舞い上がるためのきっかけが思いもよらぬところから降りてくる。

 

今回は、今にも朝日が昇りそうな空をみていたらいてもたってもいられなくなって、

近くの森へ出かけて朝日を眺めながら、竹林を通り抜けたときにその羽は降りてきた。

 

さわさわと竹が擦れ、歩くたびに足元の落ち葉のクッションがしゃっしゃっと耳をくすぐる。

霧がすこしかかった朝の魔法に包まれた森の中で私はようやく空っぽになった。

私は私という境界線が滲んで、自然と一つになる感覚に包まれた。

 

私が一番私らしくいる、そう思えるのはこの感覚がある時だ!と

その時ようやく私は本来の「私」に戻ってこれた。

 

 

そういえば、ソロプロジェクトをスタートしたとき、初めてリリースした作品の中に、

「SO HAM」というマントラを入れた。

 

これは、「わたしは、あなたとひとつ」という意味のマントラだ。

ヨガなどでは、SOで息を吸い、HAMで息を吐く。

この呼吸を繰り返していくうちに、だんだん水面に波紋が広がるように

だんだん自分と周りが一つになっていく感覚になる。

 

 

子育てでも、音楽でも、私は全部この感覚を頼りにしている。

 

ようやく、私が「私」にに戻ってき始めた。

私の「コンパス」はこの感覚だ。

 

自分と相手の境界線が滲む感覚。

自分と世界が一つになっている感覚。

 

人にはいろんな「コンパス」があると思う。

そんな自分だけのコンパスが指し示す方向へ、

恐れずみんなが歩んでいけますように。

 

去年の私の数えきれない失敗と後悔たち、そして去年の私へ。

 

おつかれさま、頑張ったね。

ありがとう。