阪神大震災から28年。
あの日を思い出すと、28年経って今日もこうして生きている奇跡を思わずにはいられない。
あれは親戚一同と我が家で新年会をした翌日の朝のことだった。
小学3年生の三学期、最後の身体測定の日。
どれくらい身長が伸びたか確かめるのを楽しみにして眠りについたのを今でも覚えている。
でも、私の小学校3年生の三学期の身体測定は行われることはなかった。
ものすごい揺れと共に母が「大丈夫か???!!」とすごい速さでリビングから
私が寝ていた部屋に上がってきた。母は必死にあの揺れの中を駆け上がってきたので、揺れを覚えていないという。
もう少しで祖父が会社に行くところだった。ガスの火は揺れで自動的に消え、
お鍋の中のお味噌汁は揺れで空っぽになっていた。
寝室のテレビは棚から飛び出し寝ていた弟の足元に落ちていた。
私はただただベッドの中で全身で突き上げるような揺れを感じながら小さくうずくまっていた。
リウマチの祖母も必死で支えながら一階に降りたところで、また大きな余震があった。
驚いて階段にしゃがみ込んで祖母と身を寄せ合った。
ガスも途絶え、電気も通らない。
頼りになるのは石油ストーブとラジオだった。
その日は登校日。
連絡網も回ってくるはずがなく、学校があるのかないのかもわからない。
とにかく登校班の集合場所へいつもの時間に親と一緒に行ってみた。
学校には半分くらいの生徒が登校していて、
すぐに全校集会でその日は臨時休校になったので家へ戻った。
我が家は家は倒壊を免れたものの、少し落ちつてから家の周りを見てみると、
斜面に建っていた我が家の庭の塀が崩れて隣の家の屋根に土が流れ込んでいた。
お昼ご飯は石油ストーブでお餅を焼いた。
そうしているうちに電気が通り、突然テレビがついた。
途端に目に飛び込んできたのは横たわった高速道路だった。
いつもお墓参りに行く時に通っている道が、まるで映画のセットで怪獣に倒されたように薙ぎ倒されていた。
その後はずっと戦争中の様子を見せられているかのような光景が流れ続けていた。
紛れもなく、当時のリアルタイムに起きていることだった。
クラスには神戸の方から疎開してきた子が転校してきて、みんなで持っている文房具などを出し合い、
その子のための勉強道具を揃えたりした。
その日からしばらくは、家族みんなで洋服を着たまま布団に入り、
いつでも逃げられるようにしていた。
ガスは1ヶ月通らず、お風呂も沸かせない。カセットコンロでの夕食作りが続いた。
それでも、温かいものを食べられるだけで、幸せだった。
学校給食はしばらくは牛乳とパンのみ、そしてそのあと缶詰がつくようになり、
いつも通りの給食に戻ったのは随分とあとだった。
色々な歯車がちょっとずつずれていたら、
あの横倒しになった高速道路に自分がいたかもしれないし、
棚から飛ぶように落ちてきたテレビの下敷きに自分がなっていたかもしれない。
ちなみに、生前父と住んでいた家は、大きな箪笥が揺れで完全に床に倒れていた。
私が住んでいた頃と同じ配置で置いてあったその箪笥の真下で、父の生前、私は眠っていた。
もし、父があの頃まだ生きていて、もし、私があそこに変わらず寝ていたら。
震災の3年前に亡くなった父ではなく、天に召されていたのは私の方だったかもしれない。
私たちは、ついつい生きているのが当たり前のように思ってしまう。
少し体調を崩したりして、健康についてはっとさせられたりすることもあるが、
また息をするように、「生きている」という奇跡は意識の下に隠れてしまう。
それはある意味幸せなことなのかもしれないけれど、
そうすることで大切なことまで埋もれてしまうのはもったいないと思う。
たくさんの人たちが過去を思い煩い、未来を不安がり、
大事な人にありがとうと伝えるのを先延ばしにして、
本当に自分が挑戦したいこと、叶えてみたいことを「いつか」の日に取っておく。
どうして、「何か」が起こるまで本当に大切なことに手をつけないのだろう?
「何か」が起こらなくても、今日、今からできることはきっとあるはず。
あの日「いつか」を迎えることなく、旅立たなければならなかった人たちがいる。
私たちの命は、神様がふっと息を吹きかければ、簡単に消えてしまう蝋燭の炎のように儚い。
だからこそ、こうしてこの炎が灯っている貴重な時間を大切にしたい。
旅立たなければいけなかった人たちの分も「今」を生きたいと思う。
過去悔いている間も「今」は待ってくれないのだから。
未来を恐れている間に「今」は過去になっていくのだから。
偶然という奇跡の連続の上に今日、今の私の命はある。
「いつか」なんて言ってないで、
今日、今、ここからできること、やれることを小さなことでもやっていこうと思う。
「いつか」なんて言ってないで、
大切な人に、「ありがとう」を伝えよう。
「ごめんね」と言いそびれたことがあるなら、素直に謝ろうと思う。
改めてこの日をこれからも忘れずに心に抱いていきたいと思います。
この「命」を最後まで大切に、生き切るためにも。
そうすることで、途絶えた命を違った形で繋いでいけますように。
山口春奈
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