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あなたは大切な人。

私は「分かる分かる」と相槌を打つことが苦手です。

本当の意味では人の気持ちを完全に理解することは、できないと思っています。

人の気持ちというのは、その人の大切なもの。

 

自分の中で勝手に決めつけてしまうことは、時に人を傷つけてしまう気がしています。

勝手に相手の心を自分の想像の中で定義して、寄り添ったふりはしたくないと思っています。

 

でも、相手の近くにいることを伝えたくて、

一人ではないことを伝えたくて、

ついつい使ってしまう気持ちもすごく分かるし、

私ももちろん使うこともあります。

 

ただ、相手の気持ちを完全に分かることができないことは

絶望ではないし、誰とも繋がれないわけではないように思います。

分からないことを前提に、ありったけの想像力を使って、

相手のことを少しでも感じられますように。

一人ではないことが伝わりますように。

そんな「祈り」を心に抱く力を私たちは持っています。

 

そんな思いで音を鳴らす時、

音楽は本当に私を助けてくれます。

なんの言葉も、なんの慰めもいらない。

ただ、音の響くその場では皆が平等なのを感じます。

 

慰める人や慰められる人といった区別もなく、

「あなたは、大切なひと」。

 

そんな理屈ではない深いメッセージを感じることができます。

その暖かな空気が、音の振動と共に満ちていくことを感じます。

このメッセージを、音楽を通して届けたい人がいっぱいいます。

 

身近なところにも、遠い世界にも。

そして、この言葉を

もう少し早くに届けてたかった・・・と思う人もいます。

 

でも、そういう人たちにさえも、音楽は届けてくれるのではないかと

思いながら、私は音楽を続けています。

 

その人たちの抱えてきた、「悲しみ」を、

今の私の人生の中に活かし続けていくためにも。

 

「あなたは、大切なひと」。

 

どうか、届きますように。

 

山口春奈